「ボランティアって、すごく立派な人がやるものでしょ?」
「時間に余裕がある人じゃないと無理だよ」
「私なんかにできることなんてあるのかな…」
NPOやボランティアの活動と聞いて、そのように考える方もいらっしゃるかと思います。
ただそのような思いを持っていらっしゃる方もNPOや支援団体の現場にはたくさんいらっしゃいます。最初から社会を変えようだとか、何か大きなことをしようと思って飛び込んだ人ばかりではありません。
SBCast. #147でご紹介したNPO法人アスイクの代表大橋雄介さんはこう言いました。
ボランティアって人のためにやるっていうイメージがあるかもしれませんけど、自分のためにやるもんだというふうに思うので、自分が楽しめるかとか、そういうふうに思ってもいいんだと思うんですよね
「誰かのため」という崇高な理想だけでなく、もっと身近で自然な「自分のため」という感情で始めてもいい。大橋さんはそんなメッセージを発信しているように思います。
誰かのためじゃなくていい。”自分のため”にはじめてみる
NPO法人アスイクでは、年間約500名ものボランティアが宮城県を中心に学習支援や子どもの居場所づくりにかかわっています。
ただその関わり方は人によって本当に様々。
- 毎週決まった曜日に子どもと学習をする人
- 月に1回だけボランティアの手伝いをする人
- 話を聞く専門のボランティアとして参加する人
こうしなければならないなんて決まりはありません。最初は見学だけをして後から関わり方を決めた人もいます。
既存の団体がやっていることで、自分に関心のあることがちょっとでもあれば、関わってみる。自分がやりたいことだけをやってみる。
その先に思わぬやりがいや喜び、そして自己成長があるのかもしれません。
きっかけは誰かを助けたいなどではなくていい。新しいことをしてみたかったとか、日常にちょっとした刺激が欲しかったとか、自分が学生時代に誰かに支えられたからとか。
最初の一歩は自分のためでいい。むしろその方が無理なく、長く、自然と続けられるものになるのではないでしょうか?
活動に関わると”見える世界”が変わる
NPO法人アスイクのような団体に関わることで見えてくるものもあります。
- 不登校の子どもたちや家庭に課題を抱える子どもたちがどんな気持ちで日々を過ごしているのか
- 彼らが何を必要としていてどんな小さな事で笑顔になれるのか
活動に関わることによって普段見ている世界が少しずつ変わってくる。そんな感覚を覚えることも少なくないでしょう。そのような感覚の変化が、ご自身の生活や仕事に役に立つということもあるかもしれません。
支援の現場に立つというとすごく重たい話のように感じるかもしれませんが、実際はそんなことはありません。
子どもとゲームをしたり、一緒に宿題を考えたり。
ふとした会話から信頼関係が生まれる。そんな一つ一つの行動が大人のあなたがたにとっても心を動かす体験になり得ます。
「自分の話を聞いてくれる人がいる」「自分のことを覚えてくれる人がいる」ということは、子どもたちだけでなく関わる大人の側にとっても大きな支えになると、私高見は思います。
「できるときだけでいい」が、活動の前提
本当に来れるときだけでも良いんですよ
NPO団体のボランティアとして登録をしても、毎回必ず来なければいけないというわけではありません。
自分のペースで自分のできる範囲で参加する。そんなことが前提になっているからこそ、多くの人が関わり続けられる仕組みになっているのではないでしょうか。
この柔軟さこそ、NPO団体に関わるということの特徴であると思います。
そうやって空いている時間にちょっとずつ関わることによって、いつの間にか「思ったより気軽にできた」ですとか「気づけば毎週行くようになっていた」という人もいるでしょう。
無理のない関わりこそが、結果として支援の継続性にもつながっていくのではないでしょうか。
活動地域以外でもできること
「でもアスイクは宮城の団体だから、SIDE BEACH CITY.は横浜の団体だから、私たちには関係ないかな…」
そう感じる方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、この記事を読んでなんらかの関心をもった時点で、支援に関わる方法はあるのだと思います。
関心さえあれば、どのような形でも支援に関わることはできます。支援活動は関心の種がまかれることによって広がっていくものだと思います。
- 地元の子ども食堂や学習支援団体を調べてみる
- SNSで気になる団体をフォローしてみる
- 支援活動の現場を紹介しているブログやポッドキャストを聞く
どれも立派な関わりの一つの形です。
インターネットが普及し、NPO団体を含む様々な団体がインターネットで情報発信をするようになった今、物理的に現場に行くことだけが支援ではないのです。
「誰かを支える」ことは「自分が満たされる」ことにもつながる
NPO法人アスイクの活動をお伺いしていて、印象的だった言葉があります。
あまり高尚な目的だとかスキルだとかそんなことがなくても全然良くて、なんとなく自分の居場所が欲しいとか、家にいてもつまらないとか何でもいいと思うんです
そういったところからはじまってもいいものだと思うんですと、大橋さんは言います。
NPOの活動に関わる理由は人それぞれで構いません。
「誰かを支えるため」よりも「自分がちょっと満たされたい」とか「誰かと関わってみたい」とか。
そんな気持ちから始めるのが、自然なスタートなのかもしれません。
そうして関わる中で誰かに「ありがとう」と言われたり、子どもたちの成長に気づいたり、自分が誰かにとっての安心できる存在になっていることを感じたり。
誰かを支えていたつもりが、いつのまにか自分の方が満たされていた。そんな経験をするタイミングもあるでしょう。
「自分のため」でいい。
むしろ「自分のため」だからこそ、続けられるのではないでしょうか。
最初の一歩は「軽く」でいい
NPO団体との関わりに正解というものはありません。
「こうしなきゃいけない」だとか「ちゃんと続けなければいけない」と思うほど、関わるための決意は重いものになってしまうでしょう。
「まず話だけでも聞いてみよう」とか「体験してみてから考えよう」でいい。
もしあなたの心に「ちょっと気になるな」とか「少し手伝ってみたいな」という気持ちが芽生え始めたら。
それはNPO団体への関わりを始める最初の一歩になり得るものではないでしょうか。
社会をよくするための活動は「立派な人」だけがやるのではありません。
今の自分の活動の延長線上で、できることを、できるときに、できるだけ。
「誰かのため」じゃなくていい。「自分のため」にはじめてみる。そんな関わりが、結果として誰かを助けることにつながる。
その循環こそが持続可能な社会貢献の形なのだと思います。