ITとコミュニティの存在

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9月3日(火)、横浜のコワーキングスペース、/Bangarrowで開催されたイベント、「エストニア視察報告レポート イノベーションのヒントがここにある」に、まちづくりエージェント SIDE BEACH CITY.理事 高見知英が参加しました。

エストニア視察報告レポート イノベーションのヒントがここにある

そもそもエストニアってどこにあって、どんな国なの? 何でIT先進国って言われているの?? ネットフォレストは何の目的でエストニアに行ったの? 行ってどうだったの?

近年話題になっているIT先進国エストニア。

エストニアとはどんな国なのか、そこで過ごす人々はどんな暮らしを送っているのか、どうしてIT先進国と呼ばれるまでになったのか。

実際現地に出向いてきたネットフォレストの方々が、現地で見て、感じてきたことを報告をするという報告会でした。

当日はオープンで、どなたでも参加可能なイベントであったため、参加者も多く、非常に盛り上がるイベントとなりました。

エストニア報告会テーマ
今回のテーマ

必要性は、人を変え、やがて国をも変える

そもそもエストニアはなぜ、IT先進国と呼ばれるところまで至ったのか。

理由はそれほど難しいことではなく、ただ、「紙が物理的に足りず、国民全員にサービスを提供するほどの力が無かったから」。

ソビエト時代IT活用を行っていたからという助けもあったものの、最終的には「紙がなかった」

それが結局、エストニアをIT先進国へと導いた根本の要因でした。

エストニアについての簡単な振り返り
エストニアがIT活用に至った経緯

ITシステムやその教育環境も行き届き、また、ツールを使えない高齢者には別途学生による講習会も行われており、その結果、ITリテラシーのない人は「絶滅危惧種」とまで言われている状況となっているとのこと。

高見は常々「必要性は人を変える」と考えていましたが、それは国も同じである ということをあらためて感じました。

日本に「エストニアのエッセンス」を取り入れるには?

私は、この報告を聴きながら「日本に、地域にエストニアのエッセンスを取り込むにはどうすればいいだろうか」と考えていました。

この日本において、いきなりすべての行政を電子化していくのは難しいです。そもそもまちづくりエージェント SIDE BEACH CITY.はそれを目的とした団体ではありませんし、それをするための力も、準備も今はありません。

しかし、エストニアのようにより多くの人にITスキルを身につけてもらう、その道筋を立てることは可能であると考えています。

ITスキルを持たない人の多いこの日本で

私が他所で常々話題にしているデータに、次のようなものがあります。

グラフ
16~65歳の人のコンピュータスキルの分布(ユーザーのコンピュータスキルの分布: ユーザーのスキルはあなたが思う以上に低い – U-Siteより)

OECD加盟国の人々がどれだけITを使えるか ということを示したデータで、日本は、このグラフ上最もレベルが高いレベル3の人々は約8%と他国に比べて多い半面、ITスキルが全くない・ほんのわずかしか使えない という人も、約4割いるという国。

そんな国では、ITをある程度以上満足に使える人は、マイノリティとなってしまいます。

たとえば先日話題になった、IT担当大臣が「SNSを使える程度」でしかないという話は、ある種それを象徴する出来事ではないかと思っています。

「レベル感の違いがすごい」78歳のIT担当相が爆誕→台湾の38歳天才プログラマーIT大臣が話題に

「スマホでSNSができるレベルでいいの…?」「この人選大丈夫?」 SNSには、早々に不安の声も多く上がっています。

ただ、日本にはエストニアのような「ITを活用しなければサービスが立ちゆかない」などというような必然性はない。その環境でどのようにして、必要性を見いだし、ITスキルを身につけるきっかけとするのか。

ひとつのヒントは、コミュニティにあるのではないか

一つのヒントとして、ITコミュニティの存在があります

ITについて、分からないことを相談し合い、解決に導く。そのようなコミュニティがあれば、年齢に関係なく、多くの人がITを身につけることができる。

たとえば、シニアプログラミングネットワークの存在は、それを体現したような存在だと考えています。年齢に関係なく、交流できる場があり、目的がある。それだけの環境さえあれば、いつだって人は学べるし、ものを作ることができる。

About Us | シニアプログラミングネットワーク

シニアプログラミングネットワークはシニア(高齢者)の方のプログラミング学習を支援するコミュニティーです。

奇しくも、エストニアにもITスキルの持ち主が集まり、お互い新しいサービスを構想する、コワーキングスペースが複数あり、そこから生まれるサービスもある とのこと。

ITについて困ったときに聞き、お互いに支え合えるようなコミュニティの場。そのような場が身近にあることは、ITスキルをより身近なものとする一つのきっかけになりうるのではないかと、最近私は思っています。

今必要なのは、ITコミュニティを、より多くの場所に作ること

ITスキルの持ち主が集まる、コミュニティスペース・コワーキングスペースは、 横浜には決して多くありません。

厳密には、横濱駅周辺や関内など、一部の箇所には密集して存在していますが、それ以外の場所にはあまりありません。

ITスキルの持ち主が集まり、交流ができる場、地域との接点が作れる場というのが、もっとあちこちに、分散して存在することが必要であると、私、高見知英は考えます。

私たち個人個人ができること

もちろん、コワーキングスペースがあればそれでいいかというとそんなことはありません。大切なのはITスキルを持った人が集まり、話し合うコミュニティがそこに存在すること。

幸いなことに、横浜にはふらっとステーション・とつか港南台タウンカフェなどのような、地域のコミュニティスペースが各所に存在します。そのような場所に集まり、ITを話題にすること。

別にそこで何かを為さなければいけないというわけではない。ただ話題にするだけでも、場は少しずつ変わっていく。高見知英は上記二つのコミュニティカフェに関わることで、実際に変化が起こっていることを感じました。

ITスキルを持つ人が、その場に居るということ。それだけでも変えていけることはあると、私は思います。

最初はいづらいかもしれません。周りの人と話せる話題がないかもしれません。しかし、ならば他の友だちと行けば良い。そういうところから、ITに対する認識が変わっていくのではないでしょうか。

地域にITを根付かせるのは、そう簡単なことではありません。

しかし、だからといってなにもしないということは、ITスキルの保有者がマイノリティであり続けるということにもなります。結果、それは自分たちにとっても、よくありません。

だからこそ、ただいることだけでもいい。そんなところから、地域に関わることをはじめてみませんか?

このイベントを振り返って、私、高見知英は思いました。